2014年7月10日木曜日

ディベーターがジャッジに抱く疑問③「なんでアーギュメントが立った/立っていないの?」

久しぶりにこのシリーズを更新します。

今回はArgumentの評価の仕方に関してです。

Berlin WUDCのBriefingによれば、Argumentとは「(モーションに関連する)特定の前提から結論までをロジカルに繋げるもの」とされています。

アーギュメントがどのように評価されたかというのがかなり試合を分けてきます。それは、リーダーであれ、デピュティーであれ、クロージングのエクステンションであれ変わりません。

そこで僕があまり好きじゃない表現を書きます。

 「アーギュメントが立っていませんでした」

なんであんまり望ましくないかというと、アーギュメントの強さは0か1か、すなわち立っているか立っていないかというシンプルな二項対立ではないからです。
アーギュメントの強度という概念は当然あると思いますが、システマティックに立つ・立たないという概念はちょっと違うんじゃないかなぁと思います。

例えば、よくあるのは「genericなので取れませんでした」「話が遠いので考慮しませんでした」「1分しか説明されていないので立ってませんでした」というような説明方法だと思います。


「generic」や「遠い」というのは、アーギュメントが相対的に「弱くなりうる」要因ではあると思いますが、「立たない」理由ではありません。

言い換えると、0か1かで説明するのではなく、グラデーションを意識するようにしましょう。

もちろん、留保として、アーギュメントの強さは、いわゆるジャッジが思う指標がいくつかあると思います。logic, relevancy, exclusivity, example, picturization, reality, word choice……等。それらは説得力を左右するファクターであり重要なのは非常に分かります。ただ、「それが無いから立たない」のようなシステマティックな説明ではなく、「どこまで評価できたがどここから評価できないのか」というのを明確化しましょう。


一つ例をあげます。例えば、ban Nazi symbolsのOppで"Free expression is important because it is about expressing how you believe and how you see the world with your own words.  That is when you convey important message to the society of your belief and thoughts.  That is exactly why liberal democracies have moved away from censorship, and really careful about banning expressions.  USA, for instance, heavily respects the first amendment"のような話をしたとしましょう。

まあぶっちゃけジェネリックですよね。とはいえ、「一般的に表現の自由がなぜ大事か」という説明はしていますし、word choiceも悪くないです。大事そうな雰囲気のアナロジーも出してはいます。とはいえ、やはり今回のNazi symbolとの関連性は薄いのは明らかなのでその分評価は高くしづらく、もしGovがNazi symbolに特有な話をしていた場合はこの話単体では勝てないでしょう。


もう一つ例をあげます。THW allow companies to voteのOppで、Extensionで"This policy does not only affect after elections, but also damages the citizen's opportunity to consider their preference regarding non-corporate issues.  When companies have the stronger right to directly influence politicians and citizens, it would lobby and campaign much more stronger than before as their demands may be realized.  Furthermore, politicians tend to discuss company's issue more in election campaigns in order to get the voting block.  This means that during elections, agendas related to companies would be likely to be prioritized, and thus not focus on issues such as privacy acts, gay marriage, female rights, etc.  These agenda also affect citizen's lives by daily rights of security, progressing rights of minorities, forming national identity, etc. Given that, citizens cannot debate or know about non-corporate issues."

というような話をしたとするとします。
だいたいジャッジとしては選挙後の話を一番に思いつく以上すぐ思いつく話ではないものの面白い視点です。おそらくNewになるでしょう(フレーミングとしても選挙後・選挙中という分け方をしてnewに見せています。)企業関連以外のアジェンダが優先されなくなるロジックも2つ出されていてOppのmodelによって起きそうです。

実は告白するとこの話はAustralsで僕が実際に2nd Negativeでしたような話です。ジャッジからの評価も概ねそのようなものでした。選挙中の情報や考える行為というのはARPとしても重要なのはわかるため評価はされました。事実、RFDにも入っていましたしパネルを含め3人のジャッジからの評価も良かったです。いい話だったと。Motionによって変わる話だし重要性もわかると。

ただし、例えばdemocracyとのつながりというprincipleの視点が少ないことや、election中だからこそなぜ大事なのか(その後の国民の運命を握るだとか)とかはもっと言えてさらに強くなったよねみたいなフィードバックをもらいました。それは確かにその通りで、そこは欠点であることには間違いないと思いました。


いかがでしたでしょうか。
大事なのは「アーギュメントの強度」という概念だと思います。0か1かではないです。間があります。「ここまでは評価できたが、ここが少し評価しづらかった」という説明方法に、してみませんか。

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