2015年1月12日月曜日

ディベートが上手くなるには ②できるだけ多くのディベートの考え方に触れること

誤解が生じるかもしれないことを言いたいと思います。

「6年間を振り返って、一番成長したなと常に感じたのは、今まで異なる環境に身をおいたときだと思います。」

これは決して部内の環境が劣悪だっただとか、先輩が指導してくれなかったとかそういう内容ではありません。僕は部のおかげでここまでこれたと思っているので。

ただ、新しい発見があったり、ブレイクスルーがあったりしたときは、常に今までとは異なる環境に身をおいたときだと思いました。それは、普段行かない大学にしばらく行ってみた時だとか、ADIで海外レクチャラーの講義を受けたときだとか、国際大会に行ったときだとか、です。

そこまでいかなくても、例えばジャッジをしばらくやってみた時だとか、モーションを考えてみた時だとか、ディベートのレジュメを読んでみた時だとか、そういう時かもしれません。

つまり、どういうことを言いたいのでしょうか。
「できるだけ多くのディベートの考え方に触れるのが大事」ということです。

これはどういうことでしょうか。

【理論的背景】
当たり前ですが、ディベートは人を説得する競技です。
そうなると、まず人って何なんだろう?という哲学のような問いにぶち当たる訳です。人は何を考えているのか?いつ説得されるのか?

ここで人の感じ方というのは多種多様で、自分が思っている風に感じない場合もあります。それを感じたときは、「なんで分からないんだ!」と子どものように地団太を踏むべきではありません。「なるほど!そういう考え方もあるのか!」と新たな発見があったことに喜びを覚えるべきです。「こういうことをすれば他の人を説得できる」ということが分かってきます。

そして、ディベートをやっていれば何かしらの「ディベート観」や「ディベート哲学」というようなものを各人は持っています。僕は自己満で「ディベート・フィロソフィー」と呼んでいます。これは自分の文化的背景だとか、過去の経験だとか、得意な思考様式だとか、大学のエジュケだとか様々な要因によって規定されています。どのディベート観の方が「万人受けしやすい」かどうかという違いはあるかもしれませんが、概ねどのディベート観も一理あります。「なるほど、そういう考え方があるのか」という経験は何度もあります。そこはぜひとも取り入れていくべきですし、自分のディベート観を見直す絶好の機会でもあります。

例えば、2年の夏のADIで僕が衝撃だったのはBPのゲーム性でした。ローガンは特にディベートをゲームととらえる部分もあり、それをベースとした戦略を色々教えてくれました。その中でもPOIの戦略性に関してはかなり勉強になるところがありました。ClosingならOpeningにどのようなPOIをすべきか、ClosingのPOIをみてOpeningはどう考えるべきか、DPMなら誰からPOIをとるべきか。ディベートを「ゲーム」という観点から見るのはかなり新鮮でした。(もちろんディベートはゲームだけではないと思いますが、そういう側面があるのは事実ですので、面白かったです)

今年のAustralsで僕が衝撃を受けたのは他の記事でも書いた通りですので省略します。

国際大会でなくても、国内でも何度も刺激を受けました。例えば昔ICUのあるOBに教えてもらったテクニックとして「PrincipleとPracticalの使い分けの方法」はかなり参考になりました。PracticalだけでダメなときはそれがPrinciple的にいいよね・悪いよねという視点を持つというのは、「Principle、Practical両者を武器として使い分ける」というものでかなり新鮮でした。他にもあるKDSの方に教えてもらったのは「Argumentのマトリクス」という考え方で、どのようなArgumentへの反論を優先すべきか、どのArgumentを守るべきかというものでした。

影響を受けたのは先輩だけではありません。同期や後輩もです。例えば後輩のブログ投稿を読んでいてああ、これはすごいと思ったのは一度や二度ではありません。うちの後輩でもSさんのMDIのWhipに関する記事は今でも必読でしょう。

このように、色々なディベートの考え方があるわけで、それは触れたほうがいいです。ぜひともに。

特に、同じ環境でやっているとディベートのマンネリ化がおきます。少し厳しいことを言うとどの大学もカラーはあります。ここを重視する、みたいな。それが画一化されて、それベースの指摘しかなければどんどん偏ったディベーターになっていきます。いわゆるガラパゴス化です。僕自身も経験したことがあります。さらに言えば、日本全体でもガラパゴス化しているところもあるかもしれません。(ABPやUADCにいくと、アジアとしてガラパゴス化しているなあとかと感じますし。)

また、場合によっては最近流行の「オーソリ」とかも邪魔してきます。特定の「オーソリ」の考え方が浸透していたり、「オーソリ」になったからフィードバックがあまり良いのがこなかったりするという現象もあるでしょう。

なので脱するのが必要なのです。


【実践】
「よーしじゃあ色々なディベートの考え方に触れよう」と思ったときにどうすればいいのでしょうか。国際大会にいきまくるわけにもいきませんし。

○ 質問しまくる
大会でも、練習でも、SNSでもなんでもいいです。とにかく質問しまくってください。昔うちの後輩のK君がHKDOで有名なジャッジに質問しまくってそのQAをうちの部にシェアしてくれました。僕も質問しまくりました。チャンスがあれば恥を忍んで聞きましょう。書くのも恥ずかしいのですが、ついこの前あったWUDCで、僕は有名ジャッジにあたったので、「ごめんなさい今更なんですけどFramingってどうすればいいんですか」って聞きました。

○ 読み物は読む
JPDUにアップされているレジュメ等The Marketplace of Debating IdeasTrolley Problem、あたりは絶対に読むべきです。他にもMonashのHandbook等もよいでしょう。色々な読み物は是非読みましょう。色々な考え方に触れられます。

○ 普段とは違う練習環境
他大学にお邪魔するのも良いですが、大学に呼びましょう。レクチャーとかしてもらうとなお更良いです。インプットの効率の良さが違います。

○ ディベート談義
他の人とディベートってどう見ているのか、どうすれば上手くなるのか等をお茶でも飲みながら話すと意外と発見が多いです。

ひとまずこのあたりでしょうか。

また、自分で理論化することは何度もこのブログで取り上げていますが大事です。

繰り返しますが色々な考え方に触れてください。自分にとっていいなと思ったものは取り入れましょう。自分にはむいていないところはひとまず考えて、その結果取り入れなくても大丈夫です。取捨選択は大事です。自分なりに納得できる考えかたの構築ができるとブレイクスルーが見えてきます。

逆に、「俺の説得方法が正しい!」「ディベート理論は完成した!」と暗にでも思っているとせっかくの成長機会をみすみす手放している気がします。


追記:
最後に、ちょっと話の本筋からずれますが。
ぜひ皆さんもディベートに関して発信して欲しいです。ブレイクしていないからとか、優勝していないから書けないとかそういうのは本当にやめてください。ディベートは人を説得する競技なので、ディベーターであれば誰でも発信する権利があります。発信してそれが新しい理論のヒントになったりすることもたくさんあります。他の人の参考になることもあります。

僕がブログやツイッターでたくさん書こうとしているのは僕の自己満もありますが少しでもオープンソースというか、公共財というか、それに近いような何かに貢献できればというのがあります。誰かが参考にしてくれるかもしれないし、誰かがブラシアップしてくれるかもしれないし。僕なりのコミュニティへの還元なので。僕の理想は、たくさんの人がなんとかdebateのアカウントをもってて発信してて、ブログとかも書いてくれる感じですねー。はい。

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