2017年11月1日水曜日

【SIDO/QDO/HKDO分析】アジアのBP大会で活躍するための3つのポイント

お久しぶりです、ak_debateです。

背景/結論
今年はSIDO、QDO、HKDOと3つのアジアのBPの国際大会でジャッジする機会に恵まれたのですが、
そこで感じたディベーター/ジャッジのギャップに関して書いてみたいと思います。
具体的には、「日本チーム/ジャッジがより活躍するには何が必要か?」というのを、この3大会を通じて感じたことを中心にまとめてみました。

結論から言うと、色々あるかと思いますが
1. "Sell your idea"の意識
2. 絶対的/相対的Impactの明示
3. Secondary Mechanismの強化
この3点があるかと思います。ポイントとしては、これはディベーター/ジャッジ両方でガラパゴス化している(=海外勢とのギャップが大きい)部分なのではないかと思っており、ディベーター、ジャッジ両者への示唆としてまとめています。

【ディベーター編】
まずはディベーター編を見ながら説明させてください。


1. "Sell your idea"の意識
実はこの言葉はJapan BP 2014に出場していたイムランに教えてもらった言葉です。
予選で当たった際に、BPとAsianの根本的な違いは"アイディアをどれくらいジャッジに売ることができるかだ。Sell your idea!"と教えてくれました。

具体的には、イントロから最も重要でイイタイコトを明示化し、その例も最初から出していけ、というような各論まで踏み込んでくれました。

なぜこれが重要になるのか?というところですが、シンプルに、ジャッジが8スピーチを聞いた後、4チームの優劣を短い時間でつける必要があるためです。

例えば、これはBP Novice West 2017 Handbook 寄稿文#5でもこう書かれています。
特にBPにおいて、「分かりやすい=評価しやすい」というのは大きな武器です。
一々よくわからない部分を見るより「分かりやすいからここ上位にしよう」という方が簡単ですし。
最終的にDecisionを出すまで15~20分しかありません。その間にすべての複雑・難解なスピーチを紐解くのは不可能です。
これをまさに体現したのはHKDOのOpen Quarter Finalでジャッジした時でした。1位はクリアで、2-3位でディスカッションした時にチェアージャッジは「まず各チームが言ったことを一言でまとめるとなんだっけ?」という問いからディスカッションを始めました。そこですぐに出てこないアイデアに関しては「はっきり言われていなかったよね」と評価が一気に下がってしまいました。

各論としては、まずイントロ、アウトロでしっかり印象に残す、立論ではそのアイデアをサポートする構造を分かりやすくつくる、パワフルな具体例を用いる(ICUT 2015でラフィーク(昔のAsian BPとかのFinalist)が言っていましたが、「Examplesは数より質」です)、必要に応じてPOIでもリマインドする、などになるかと思います。特に具体例に関しては、海外のジャッジのAverage Intelligent Voter (Informed Global Citizen)のレベルが高いため、ちょっとでもドンピシャな例であれば大きく評価してくれる一方、そうでないと一気に評価が下がります。例えば、HKDO SFのTHBT the international community should create an independent sovereign Rohingya state in northern Rakhineで、PMが出してきた具体例の悪さ(インド/パキスタン、北朝鮮/韓国)に関してジャッジは低評価でした。また、同じくHigh School Pre-Semi FinalのTHS politically active first ladies.でOGが出したTrumpの例のCredibilityが悪く「なんでObamaとかを使わないのだろう」とジャッジが嘆いていました。

また、日本では驚くべきポイントだったと思いますが、同じくそのHigh School Pre-Semi Finalで、PMがpoliticsの話に終始、LOがそれもあるがfeminismも大事だよねと言い、DPMがそれに対応する形で両方話したものの、私以外のジャッジ2人は「それじゃ遅すぎで4位」と言っていました。(そもそも分析の深さやエンゲージで下がるなぁと思っていたので順位は一緒だったのですが、そんなに重く見るんだ、とちょっと驚愕しました)もちろん、その2人がstandardなジャッジなのか?という点は注視する必要はあるかもしれませんが、それくらいにSell your ideaがしっかりしていないと評価が下がる、という例かもしれません。

2. 絶対的/相対的Impactの明示

1. に関係しますが、2種類のImpactを両輪で明示できるかごうかが鍵になります。もちろん、ジャッジもどうImpactfulなのかは考えながらジャッジしますが、どうしてもジャッジとしても明確に言ってくれないと気付かない、or勝ちにしづらいという構造があります。

絶対的/相対的Impactはak_debateによる造語ですが、下記のように定義させてください。
絶対的Impactというのは、「そのArgument/Idea単体としての重要性」です。いわゆる古典的なSQ AP ImpactのImpactかもしれません。どうひどいのか?どういいのか?(Practical, Principleどちらもあるかと思いますが)の話ですね。日本との違いとしては、よりそれがイラストされた分が印象操作などとされずにしっかり評価される部分でしょうか。

相対的Impactというのは、ディベートの中での重要性という話です。これは例えば相手の話をより切っているだとか、どこにClashしているだとかです。日本でもよくやる"This directly clashes with the opening"のようなものですが、具体的にどのようにClashし、上回っているかまで説明しているところはポイントでしょう。

特にClosingになった際にこれは顕著になります。例えばSIDOでのOxfordのチーム(優勝チーム)は必ず"Why is this extension important?"と愚直にサインポストをつけ、いかにOpeningの話を上回っているか、相手の話に対応しているかなどを説明していました。

また、HKDOで日本チームが負けてしまっていた時に他のジャッジに休憩時間などの雑談で聞いてみていると、「明示的にImpactを言ってくれていないからだ」と答えられました。「言っていることは分かるんだけど、ラウンド中にハッキリ言ってくれないと」と言われたのが印象的でした。

また、感覚的ではありますがHKDOの予選でジャッジしていても、「なんでOpeningを超えているかの説明がはっきりとないから残念ながら負けにした」と言った際のディベーターの納得感も違いました。(もちろんHKDOが招へいジャッジだけで回っているだとかいろいろなポイントもあるかと思いますが…)「Openingより重要なのが明示されていなくて」と言った瞬間にClosingのチームが頷くことが何度もあったので、ちょっと留意してもいいかもなと思いました。

3. Secondary Mechanismの強化

これもまた造語で恐縮ですが、Primary Mechanismをすぐ思いつく話(モーションからすぐ出てくる話)とすると、Secondary Mechanism(すぐ出てこないステークホルダーや、中長期的な視点)をしっかり海外勢は立てている印象がありました。

例えばQDOの優勝チームは、GFのYou are a respected, high ranking, heterosexual officer in the military.  In the past, you have publicly advocated for LGBT rights within the army and have worked hard to improve how they are treated.  A newly elected conservative government has enacted a ban on LGBT's serving in the army.  As the officer, THW resign.というモーションのCOから、resignしてしまった場合は内部から、司法/警察/科学者などへの調査を依頼して、evidence baseでLGBTがいることでoperationが非効率的なのかどうか(=excludeしていいのかどうか)議論することができる、というようなinternal changeの話を立て最初からほぼ全員のVoteを勝ち取っていました。

他にも、例えばHKDOのR7のTHBT HK government should post strict restrictions on non-holders of HK passports right to purchase properties.で、今回のTop 10 speakerに入ってGFまで進出したディベーターはOGは、単純なpurchaseを禁止したmodelとしてprice gougingがなくなることや市民が地元でビジネスを行うことによる経済効果にとどまらず、「strict restrictionによって生じた余剰からethnic quota, poor quotaのようなpublic housing policiesをinitiateできる」というような話を出していました。

日本であれば「自己満」「遠い」と呼ばれるような話かもしれませんが、それらも例えばメカニズムを具体例を詰めながら話していたり(例えば後者であればシンガポールの話が具体例でついていました)、そのImpactまで伸ばしたりしていました。(例えば後者であれば、Oppのcounterproposalのpublic housingへの対応)あくまでIdeaの強さはmechanism, examples, impact, relevancy等の「掛け算」であり、relevancyが多少薄くてもrelevantにしていたりそれ以外が強い場合はとるというholistic adjudicationが垣間見えたと思いました。

【ジャッジ編】
そして、これらの話は実はジャッジにもRecommendationがあります。ほぼディベーターのほうで詳しく説明したので、スライドを中心にさせて頂きますが、基本的には「ディベーターにその3つを意識したRFD/FBを行う」というところになるかと思います。


1. "Sell your idea"の意識
ここで日本勢が良くも悪くもやっているのではないか、と思っているのは「アイデアの咀嚼」です。「こういうことを言いたいと思ったんだよね」という介入が多い気がしています。もちろんこれは悪いことではないのかもしれませんが、「介入しすぎていないか?」というのは見つつ、また「よりはっきりとsellしたチームに対して評価をあげる」ことが重要な気がします。また、勝ち負けに反映されなくても、「より分かりやすくsellするには」という観点でフィードバックするのが重要かもしれません。

誤解してほしくないのは、はっきり言っていないから負けね、というようなラディカルなジャッジをしろということではないです。Sellできていた度合いがRFDにはねてくるのも一個ありなのでは?というご提案です。

蛇足かもしれませんが、仕事を始めて海外のビジネスパーソンと会話することも増えたのですが、やはり海外勢は一言目から伝えたいことを明確に伝えてくるし、スライドなどをつくっていてもexplicitに書かれているか、clarityが高いかなどがフィードバックのポイントになっています。一方、日本勢だと「相手の話を咀嚼していてよかった」のようなフィードバックが来ることも多く、日本では「聞く(理解する)」「話す(伝える)」だと前者がより重要視されているような気がしました。あくまでn数も少ないので蛇足にとどめますが、「ハイコンテキストな会話」「あうんの呼吸」等の言葉からもそこそこ当てはまるのかもしれません。

2. 絶対的/相対的Impactの明示
誤解していただきたくないのは、ジャッジとしてディベートに介入するなということではありません。

例えばSIDO/QDO/HKDOのBriefingでも、「アーギュメントの重要性は明示的に言われていたものの、暗示的に合意されていたものの両方である」と言われています。また、Extensionに関しても「Judges need to look for which parts of the speeches are new」とジャッジに評価の責任はあることを伝えています。一方で、とはいえそれが明示的でない場合は評価が下がりうること、それが明示的にされていれば評価が上がりうること、というジャッジ/FBをすることは、ディベーターへの成長にもつながると思います。

ここのバランスは当然難しいですしケースバイケースです。"ImplicitではあったがOOをtackleしており・・・"と評価することもあれば、"Explicitでなかったため評価しづらく"と、評価をさげることもあると思います。ただ、Explicitなほうが評価は当然あがるので、それをFeedbackすることは重要な気がします。

3. Secondary Mechanismの強化
海外ではsecondary mechanismまで含めてしっかり説明していないと「薄い」「浅い」と言われることがあります。「コアじゃなかった」「Relevantではなかった」「自己満だった」というのは思い込みではないですか?という投げかけをしたいというところもあります。

一方で、ここでも誤解してほしくないのは、妄信的にSecondary Mechanismをとる必要はないということです。

ディベーター編でも書きましたが、「あくまでIdeaの強さはmechanism, examples, impact, relevancy等の「掛け算」であり、relevancyが多少薄くてもrelevantにしていたりそれ以外が強い場合はとるというholistic adjudicationが垣間見えたと思いました。」であり、secondary mechanismだという理由だけで評価を下げることはやめたほうがいい、というところかもしれません。

特に難しいのは、Secondary MechanismはIntuitiveでない部分もあるため、説明するうえでの力量も要するところです。いい視点であっても十分に説明力が足りずに強く立ち切らないことは多々あるかと思います。ジャッジとしては一緒に考え、どうすれば立ったのか、まで考えてあげることが重要でしょう。

最後に
3つのポイントはいかがでしたでしょうか?個人的には、ディベーター/ジャッジの相互作用の中で、この3つが日本に輸入されることにより、より日本人のディベート力があがり、海外(アジア)でも評価されることにつながることを願っています。

何かご質問などございましたらお気軽にご連絡ください。

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